大学院生作品 GRADUATE STUDENT WORKS
絵本「行ったことのない街」
陽 越
ある街を舞台とし、街の様子と、そこに住む人々関係の変化を表現した「探し絵本」を制作した。
各ページのイラストレーションで「商店街」「住宅地」「公園」三つのシ—ンと、そこに暮らす人々の関係性の萌芽と変化を表している。さらに「春分」「端午の節句」「夏休み」「中秋」「寒露」「冬至」「春節」七つの時期を描いた。想定読者の子どもは、絵本を読むことで、これらの変化を探しながら、ストーリーを推測、想像、創造することができる。
作品
私の研究テーマは、「子どもの他者感情理解能力を育てる探し絵本に関する研究」である。探し絵本は、観察、推測、想像を通して読む本なので、この過程で遊びながら自発的に人の気持ちを想像し、自己中心的な視点の脱却を促す側面を持っている。他者の感情理解能力を高め、周りの人たちに関心を持つようになり、周りの環境を観察する習慣を身につけさせる効果があると考えた。文字の読めない幼児にとっても、登場人物の表情の意味と状況の判断を通して、物事を識別し、社会生活に望ましい規範意識と道徳性の芽を培いうる。加えて、子どもが自分なりのストーリ―を語ることで、人間関係の構築に重要な言語能力と表現力を育てることに寄与しうる。
作品
この作品の特徴は、たくさんの登場人物と豊かな細部にある。それぞれがストーリーを持っており、すべての登場人物が主人公になっている。子どもは好きなキャラクターを自由に選んで読むことができ、読むたびに新しい発見がある。前後の景色とページのめくり方を結び付けるしかけは、本の中で立体的な空間を構成させることをねらったものである。
作品
文部科学省の調査結果によると、小学校におけるいじめの件数が年々増加している。この背景には、子どもの他者の感情理解能力の不足や共感力の乏しさがあるという指摘もある。本作品は、絵本を通じて、共感力、他人を思いやる心を育てることを試みるものである。子どもが人間関係に関する不安や悩みを和らげ、自ら人との関わりを希求し構築していく喜びを伝えたい。