3年生後期、最後の授業はアートプロデュース表現領域と合同で開講する「ヒーリング・アートプロジェクト演習」です。現代社会において、アートとデザインが社会とどのような形で関わるのかを、ヒーリング・アート(癒しの芸術)を通して考え、公共空間におけるヒーリング・アートの様々な可能性を探り、その実践の方法について模索しました。
2019年度は都内の病院と、特別支援学校2箇所の3つに分かれて、実際の公共施設に協力いただき、現場見学、スタッフ・利用者等へのプレゼンテーションや意見交換などを繰り返して企画・制作が進行されました。
<見えない・見えにくい子どもたちが体で読む絵本>
ヒーリング表現領域としての絵本の取り組みとして、2017年度より3年目となる対象に寄り添う絵本の提案です。
筑波大学附属視覚特別支援学校をコラボレーションパートナーとして、幼い段階から視覚に障害がある子どもたちのための絵本づくりに取り組みました。
学習の柱を二つ建て、一つ目は幼い頃から視覚に障害のあるこどもたちを知ること、学ぶ事。子どもの発達段階、視覚障害児教育、ユニバーサルミュージアムなどについての講義をはじめ、幼稚部育児学級の子どもたち0〜2歳児と遊びながらの交流を通して観察をし、保護者や指導者のお話を伺うことも出来ました。もう一つは視覚障害児のための絵本の現状を知ること。たくさんの国内外のさわる絵本を見て、取り組み方を聞き研究しました。そこから見えない・見えにくい子どもたちに必要なことを考察し、さわることによって世界が開けるということ、触ることは自分から外界に関わっていこうとする自主的な活動と分かりました。しかしさわろうと手を伸ばすこと自体が簡単にできることではないということも知りました。
積極的にさわっていくことが出来るように、「さわること、ふれることを体全体で楽しめる絵本」を考え、制作しました。
制作の途中の段階で、視覚障害児教育の専門家よりアドバイスをいただき、試作をくり返しました。
最後は、学生たちが体で読める楽しい絵本の試作を完成し、筑波大学附属視覚特別支援学校へ伺い、幼稚部と育児学級の子どもたちに実際にさわって楽しんでもらいました。
育児学級の子どもたちは保護者と一緒に絵本を読んで楽しみ、その後には皆んな体が活発に動いていました。幼稚部の子どもたちは、絵本を楽しむ手助けをしてくださる先生方のアドバイスも加わり、皆それぞれの楽しみ方をしてくれました。教員の先生方からは、素材の選択がそれぞれの絵本に効果的であり、学生がこどもたちのために一生懸命考えていることが伝わる絵本でとても良かったと講評をいただきました。
<授業の様子>
<学生作品>