7月22日(火)に特別講義「たしろちさと×松岡希代子・たしろちさとの絵本つくり」を開催しました。
たしろちさと先生は大学卒業後4年間の会社員を経て絵本作家を目指し、2001年に「みんなの家」(福音館書店 おおきなポケット)で絵本作家としてデビューしました。2003年には世界的な絵本編集者のマイケル・ノイゲバウアー氏により「ぼくはカメレオン」が世界7カ国同時発売されました。2011年には「5ひきのすてきなねずみ ひっこしだいさくせん」で第16回日本絵本賞を受賞した、活躍中の絵本作家です。
今回の特別講義はたしろ先生と松岡希代子先生のトークショウ形式で進行しました。
松岡希代子先生はイタリアでボローニャ国際絵本原画展の運営や審査員などを歴任しており、日本巡回展を開催している板橋区立美術館の副館長でもあります。女子美では絵本芸術論を担当されています。
松岡先生とたしろ先生のお話から、たしろ先生のやさしいお人柄と同時に世界を見つめる深い眼差しが浮かび上がり、たしろ先生の絵本がさらに面白く感じられました。
トークショウはたしろ先生がボローニャ国際絵本原画展に応募したけれど入選出来ず、それでもボローニャブックフェアへ出向き、世界的な絵本編集者マイケル・ノイゲバウアー氏に「ぼくはカメレオン」の絵本ダミーなどを見てもらったところから始まりました。
「ぼくはカメレオン」の出版はそのときすぐに決まりましたが、実際に発行されるまでの2年にわたる描き直しやレイアウト変更などのやり取りを、ダミーやテストプリントなどのたくさんの資料を提示しながらお話しくださいました。迷った時期もあったそうですが、絵本というフォーマットを最大限に活かすため、妥協することなく、とても丁寧につくられたことが伝わってきました。また、絵本出版までには多くの行程があることも分かりました。
たしろ先生は現在昆虫の絵本の第2弾を制作するためにご自宅で虫を飼って観察している大量のスケッチやメモ、写真を綴っている「ムシちゃんノート」も披露して下さいました。また、「5ひきのすてきなねずみシリーズ」では、ねずみの楽器を想像して実際に音階も表現できるまでにつくり込み、イメージを膨らます試みをされたことも聞き、その徹底した取材やイメージ作りにみな感嘆の声をあげました。
たくさんの資料や考えから創り出したまるで映画のような世界の中より、必要な部分を抽出して絵本というかたちにするというたしろ先生の物語つくりの方法をうかがい、絵本では見えてこないところにも隠された物語がつまっていることを知り、絵本の奥行きの深さをあらためて感じた講義となりました。
トーク終了後に学生達はマイケル氏とのやり取りが残るテストプリントを実際にみせていただきました。
たしろ先生と松岡先生に絵本について相談したり、経験談を聞く学生が並びました。